フィナーレを。 豪奢な夢はやがて終わり、ビロードの手触りだけを残して夜は残酷な明るみに暴き立てられる。 薔薇の唇、真珠の頬、黒曜の瞳にいまは何を映すのだ、いとし子よ。 どうか目を閉じておいで、柔らかな闇がこの地に満ちるまで。 寝伽の物語を聞かせよう。 裏切りで私の胸を刺すといい。 それがお前の望むものならば。 望みそのものを目の前で打ち砕くのもいいだろうね、籠の中の歌姫。 そうすれば私との約束をつがえていられただろうに。 憐れむような微笑とその頷きを認めたとき私は満たされたのだと思った。 欲してやまなかったものをついにこの手におさめたのだと。 甘い甘い夢は一瞬で費えてこそ価値があるものだとは思わないか? 喪失の悔やみが深く鋭いほど、快楽は精神を麻痺させうる。 ただそれのみが真実であったように。 寂寥とした冬景色のなかでこそ真紅の薔薇が胸をつくように。 天の子午線をまたいで無慈悲な太陽が忍び寄る。 天使よ、移り気で美しく、したたかな私の天使。 私はお前を愛していたよ。 さやかに鳴り渡る、くすしき楽の音を枕辺に。ただ片時私を貫いたあの光をまぶたにとどめて。 さあ、フィナーレを。 Fin March 23,2006 Hira
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