Go West


待っているのかなぁ。おまえは。
そう、きっとベンチにでも座って。
煙草を吸いながら、時計を気にして。
足元のケースに目を落として。きっと重いだろうが。
・・・・・・ああ、でも悪いな。俺は行けないよ。


腹で渦を巻く灼熱感が冷たい汗を浮かばせる。
喉元にせり上がる生温さ。咳き込む。
錆び付いたにおいに、鼻を刺され。視界が波打つ。


いやに眩しいんだ。ここは。
赤いひかり。ぎらぎらしててさ。
まるでやつらの顔みたいだぜ。
ばかにしやがって。
ぎらぎらと。主張する、正当性が。癇に障って。


立ちはセかって、引きつった、若い顔。
学校を出たばかりだろう、制服の男。
唇の端を吊り上げるような、固まった表情で。
軽い破裂音。
体の中心を衝撃が抜けて、男の右手が銃を握っていたことに気づく。
慣性で後ろに倒れこむ音を、他人事みたいに聞く。


あれって本当だったな。
撃たれた腹より、足が痛えや。
じわじわ来るんだな。
どじ、踏んじまった。


青二才に、おびえたように。愛想笑いを浮かべる。
アタッシェケースに入っていく札束。
手の中のごついナイフ。現実感のない重み。
白い腕。警報機に、伸びる。


見てみたかったんだよ。そんな、一生見れないようなの。
そう悪いことでもないだろ?
やつらの顔も面白かったよな。泡、食ってた。


疎外されているんだ、いつだって。
冗談とも本気ともつかない口調。
やつらが後生大事に抱えてきたもの、かっぱらってやろうぜ。
興味と。うなずいた。


逃げ切れたか?
全部持ってっちまえ。
この世の果てでばら撒けよ。
俺たちにはこんなもの、何の意味もないんだって。


浮かぶ笑み。
沈黙の音が、降りてくる。


Fin July 8, 2004 Hira



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